ウサギとカメの物語 番外編
お腹もいっぱいになって満たされた私とコズは、土曜日で混み合う街中をゆったり歩きながら、今日は何を買おうかと話す。
実に他愛のない会話。
私は冬用のロングブーツと、仕事でも使えるような上品なバレッタが欲しい。
コズは家の中で履けるような暖かいモコモコの靴下と、ペタンコのパンプスが欲しい。
とりあえず共通しているものは、靴だった。
「どこで靴見る?」
「エスパルかパルコにしよ〜」
「パルコに入ってるスイーツ食べ放題行きたいなぁ」
「コズ……、趣旨変わってるよ……」
つわりから開放されたコズの飽くなき食への探究心。これには感服する。
でも、とりあえず今日は買い物が目的だったはずなんだから、とスイーツ食べ放題は流して予定通りにファッションビルへ入った。
学生らしき若い子たち、手を繋いで歩く恋人、私たちのようなアラサー女子、友達のような母娘……、休日ともなるとそんな人たちでごった返す。
秋冬物を着たマネキンが店頭に並んでいるのを横目に、目に留まった店に入りつつ会話を続けた。
「今日は田嶋は何してるの?家で寝てるとか?」
コズの何気ない質問に、若干気が重くなりながら口を尖らせる。
「結婚式よ、結婚式。人当たりいいから結婚式に呼ばれまくってんのよ。どうせ三次会まで参加して、ベロンベロンに酔っ払ってタクシーで帰ってくるんだわ。お決まりのパターンだから」
「結婚式に参列しても、男って大して結婚願望とか持たないものなのかね〜」
「それよ!幸せな新郎新婦見てちったぁ感動しろっての!そして自分に置き換えてみろっての!……あ、そちらの体のおっきな旦那さんは?休みの日は何してるわけ?」
「ボルダリング」
「ボ、ボルダリング?うわぁ、超意外」
「でしょー?ヤツはハマると永遠にハマるの。どんな感じでボルダリングやってるのか見たいんだけど、絶対に来るなって言うしさ〜」
「どうする、めちゃくちゃ機敏に動いてたら」
「無い無い、それは無いわ」
何気ない話でケタケタ笑い合う。
言いたいことも、お互いにオブラートに包むことなくすんなり言える。
コズと話してると、楽しくて時間が経つのがあっという間に感じるのだ。