ウサギとカメの物語 番外編


「なんていうか〜……、順とはマンネリ中かな。結婚したいのは私だけで、順はまだしたくないみたい」


この話は土曜日に飽きるほどコズに聞いてもらった。
……というか、恋愛ネタを振られると決まって「マンネリ」「結婚」というワードが脳内から勝手に引っ張り出される。
そうして、周りは私が「結婚したい女」という印象を抱くのだ。


コズは基本的に私と順に関して、全くもって心配などしていない。
自分と須和を持ち出して、「ほら、奈々たちはオープンに愛し合ってるじゃない。羨ましい!」と逆に羨望の眼差しを向けられるほどだ。
続けざまに必ず言われる。


「大丈夫、絶対そのうちプロポーズされるって」


コズの楽観的な発言は今に始まったことじゃない。


「男が結婚したくなる瞬間とか、プロポーズしたくなる雰囲気とか、それってどんななの?男としての見解を聞かせてよ」


それまで忙しなく動かしていた箸を置いた私は、恐ろしく整った顔立ちの優くんを見据えてドンと構える。
さぁ、聞かせてご覧なさい!


並々ならぬ私の怨念……じゃなくて、真剣な表情に押された優くんが、あははと笑い飛ばしながら軽い口調で鼻歌でも歌うみたいに答える。


「まずね、結婚したくなる瞬間は人それぞれね。……あ、そんなに怒ったような顔しないでよ。こんなの予想つくでしょ?で、プロポーズね、これに関しては男は2つに分かれるよ」

「なによ、その2つって」

「1つめは思いつきで場所も選ばずにサラッと言っちゃうタイプ。そうだな、みんな大好きドラゴンボールの孫悟空のプロポーズなんかは、その典型的なやつだね」

「………………知らんわ、そんなもん」

「え、知らないの?悟空が天下一武道会で戦ったあと……」

「いい。2つめお願いします」


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