ウサギとカメの物語 番外編
どうしてなのかは分からないけれど、俺は周りに「優しい」とよく言われる。
同期の事務課の大野梢(正確には須和梢だけど、呼び方は今さら変えられない)には「優男」とまで言われる。
お人好しなのは自覚してるけど、そんなに言われるほど実際は優しくなんかない。たぶん、普通だ。
例えばバスに乗っていて、足を組んで化粧をしている女子高生がいたとして。
そこに足の悪いおばあさんが乗ってきたら、当然「おばあさんを座らせてあげよう」と女子高生に声をかける。
そんなの人として当たり前のことだ。
例えば道端で重そうな荷物を持って歩いているおじいさんがいたとして。
「どこまで行くんですか?良かったら手伝いましょうか?」と声をかける。
そんなの人として当たり前のことだ。
例えば迷子になっている男の子がいたとして。
「大丈夫?名前は言えるかな?おうちは遠いのかな?お兄さんと一緒におまわりさんのいる所まで行こうよ」と声をかける。
そんなの人として当たり前のことだ。
例えばスーパーの棚に陳列していた商品を誤って床にバラまいてしまった女性店員がいたとして。
「手伝いますよ」と声をかけて商品を手早く拾う。
そんなの人として当たり前のことだ。
…………………………え?もういい、って?
あ、そう。
じゃあこのへんでやめておくか。
こんな具合で、俺は別に普通だと思うんだ。