ウサギとカメの物語 番外編
その日の帰りに、早速奈々と2人で百貨店に寄って出産祝いを選んだ。
「どうしよう、服も靴下もスタイも全部可愛いよ〜」
「オモチャはどう?」
「わぁ〜、順、これ見てよ!こ〜んなにちっちゃい帽子あるんだねぇ〜」
「これは?人気ナンバーワン、英国王室御用達のおくるみ」
「ねぇねぇ、このガラガラ!中にキリンさん入ってる〜」
「お風呂でプカプカ浮かべる浮き輪だって。こういうの面白いんじゃない?」
サンプル品の浮き輪を手に取って奈々を見る。
彼女は俺のことなどちっとも微塵も見ていない。
ベビー用品に夢中になっていた。
きっと俺の声も届いていないんだろう。
「たしかコズに聞いた話によると、須和の兄妹に子供いるんだよね。たぶん服とかはお下がりもらうだろうから……」
と、なにやらブツブツつぶやきながら店内を歩き回っている。
俺は自分の意見を伝えるのを諦めて、彼女の後ろをついて歩くことにした。
そんな中、タイミング良く携帯に柊平からラインが届いた。
簡潔な文章に、赤ちゃんの写真が添えられている。
『お陰様で昼に男の子が産まれました。出産祝い待ってます』
「今選んでるっつーの」
笑い混じりに携帯に向かって口を尖らせていると、すでに先を行っていた奈々が俺を呼ぶ。
「順、ちょっとこっち来て〜」
「はいはい」
親友の出産にはしゃぐ奈々は、なんだか子供のように飛び跳ねて喜びを表していて。
素直な反応にこちらまで笑顔が溢れた。