ウサギとカメの物語 番外編


「プッ……、あははははは!順、最高〜!」


さっきまでしおらしく涙を流していた奈々が、今度は大きな口を開けて爆笑し出した。
釣られて俺まで笑えてくる。


「あんなに大々的に誰かに見られるつもりは……」

「ふふふ、分かってる」

「奈々……、ほんとにいいのか?」

「バカね」


答えなんて変わるわけないでしょ、と彼女は微笑み、そして俺の手を取って歩き出した。
広い駐車場を、2人で手を繋ぎながら歩く。


「お金なんて、気にしなくていいのよ。順だけが頑張るなんて変じゃない。私にも頑張らせてよ」

「………………うん」

「エンゲージリングはいらないから。その代わり、うんと美味しいご飯でも食べに行きましょ」

「…………うん」

「…………ねぇ、もしも……、どうしてもなんかの事情で子供が出来ないことがあったとしたら……。それでも私と結婚すること、後悔しない?」

「しないよ。2人で生きていくことに、意味がある」


ドラマの影響なのかなんなのか、奈々は余計なことまで心配しているらしい。
俺は彼女の手を強く握り返して、安心させるように笑いかけた。


「どんなことでも、2人で乗り越えていこう」

「…………うん、そうだね」


奈々がはにかんだように笑ってくれたので、それだけで幸せな気持ちになった。


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