ウサギとカメの物語 番外編
いや、でも。待てよ。
落ち着け、俺。落ち着くんだ、蓮。
どんな時でも前向きに生きてきたじゃないか。
「好きな人……ってことは片想い?付き合ってないんだよね?」
念のため確認を、と震える声を押さえて聞いてみると、彼女は曖昧に首をかしげた。
「あー、どうなんでしょうか……」
「え、どういうこと?」
「私、2番目の彼女なんです」
「………………は?」
東山さんが言ってることの意味が分からない。
俺がおかしいのか?
おかしくないはずだ。
どうなってるんだ、俺の理解力!
「彼には恋人がいるんです。でも、諦められなくて。それで、2番目でいいからって伝えたら、オッケーもらえて……」
彼女の話を聞きながら、呆然としていた。
この子は何を言ってるんだ、と。
それよりも、山下め。
あいつ外面はいいと思ってたが内面は腐ってやがったな、男のクズめ!
ゲスの極みだ!
「東山さんは……それでいいの?好きな人の、1番になれないんだよ?」
そんなの苦しくて切ないだけじゃないか。
なんでわざわざ自らをダメにするような茨の道を行こうとするんだろうか。
それほどまでに山下に魅力があるってことなのか。
彼女は俺の問いかけに、迷うことなくうなずいた。
その目はまっすぐで、どこまでも純粋だった。
「いいんです、それでも。好きな人に愛されるのって、これ以上無いくらい幸せなんです」
「…………………………そっか」