何度でも、君に
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言葉を失うってこういうことを言うのだろうか
ああ、夢ならどうか今すぐに覚めてほしい
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私、四宮澪は誠蘭高校のバスケ部のマネージャーをしていて
今日もいつも通り練習が終わり今日は眠いなー、なんて思いながら後片付けをしていた
「澪!帰ろう!」
そんな私を呼ぶこの声の張本人は私の彼氏の敷島俊
明るくて人当たりも良くていわゆるクラスの人気者みたいな人で、付き合ってそろそろ半年たつが未だに何で私なんかと付き合ってるのか分からない
『これ片してからいくから、先に昇降口にでもいってて』
「えー、待ってるのに」
『いいから!』
はーい、と不満そうな声で真っ直ぐ昇降口へと俊は向かっていった
何で一緒に行かないかって?そんなの簡単、単に私が恥ずかしいからである
俊は何かとスキンシップが多い。しかし私は典型的な日本人だ。人前で手をつなぐのでさえ羞恥で死にそうになる
その為まだ人がチラホラいる口内なんて論外、特に周りの女子になんて言われるか気が気でない
それと同時に、あんな素敵な人に好意を向けられているというのに素直になれない自分が嫌になる
すべての片付けを終え、体育館近くのロッカールームでいそいそと着替えながら小さくため息をついた
まさしく塩対応。俊は優しいからそんな所も好きなんていってくれる、それでも好意を向けられるだけなんて嫌だ
今日こそは自分から頑張ってみようかな...そう思ってロッカールームをでた、するとその時
『うおっ』
ボスっと音とともに誰かにぶつかった。こんな時にまで色気のある声すら出せない自分に嫌気がさすが、まあそれは置いておこう
相手に謝ろうと思い顔を上げた。が
『あらら....?』
その場に人の姿は見えなかった。ぶつかった感じからして男子ってのは分かったのだが.....
『相手がいないんじゃ仕方がない。』
俊を待たせ続けるのも嫌だし、気にせずせっせか足を進める
その時ようやく私は廊下が騒がしいことに気が付いたのだ
なんだあの人だかり....芸能人でも来てるのかねー、なんて、呑気な私の考えを粉々に砕く言葉がその時耳に入った
「2年の敷島が階段から落ちたって」