生きる。~番外編~



「中学生のくせに単車もキレイに乗っていて

俺は思わず声をかけたんです。名前は?って。

そしたらあいつは俺が名前を聞いてんのに答えず

『俺が負けるとでも思ってたわけ?』って言ったんです。

こいつ、俺が手出ししようとしてたことを知ってたのか

って思いました。でも違っていて、一輝は

『あんたの考えてることなんて俺にはバレバレ。』

って言ったんです。

俺は一輝や晴輝、湊のように人の心は読めません。

こいつ、やっぱり大物だなと思い、如月に誘いました。

そしたら今度は『俺が入るからには絶対トップをとる』

って言ったんです。

そこまで自信満々なやつ、他に見たことなくて

俺は一輝をどんどん知りたくなりました。

当時中3だった一輝はどんどん腕を伸ばして

すげー強くなったんです。

それこそ、当時の幹部よりも。

だけどそんだけ強くても先輩を立てるやつで

性格も抜群によかったから信頼もすごくて。

なにもかも完璧にやるやつでした。

族のくせに勉強もできて、人付き合いもよくて

喧嘩も強くて無駄な動きはしない。

頭の回転が速い上に運動神経もいいから

どんな相手でも負けない、強いやつでした。

だから俺は一輝を総長にしました。

"守るものがある俺は誰にも負けない"

あいつはいつもそう言っていました。


当時の俺はこのままじゃ一輝に負けると思い、

人の心は読めないけど、心の読めるやつに

心を読まれない努力をしました。

その甲斐あって、一輝はいまだに俺より弱いです。

由茉様が一輝の妹だと知ったときは驚きました。

ずっと知らずに由茉様のご実家へ行き、

そこに一輝と晴輝がいたので。

一輝の守るものは晴輝だけだと思っていました。

だけど一輝は俺が由茉様の執事と知ると

『由茉をお願いします』と頭を下げました。

きっと一輝はずっと由茉様を守るために

強くなってきたのでしょう。」


「……そうだったんだ。」



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