生きる。~番外編~


「…片桐さん…」


「お怪我はありませんか?」


「あ、うん…でも純が…」


「少々お待ちください。
………早く指輪を出せ。」


「いてーよ!わかったよ!
出すから離せよ!」


片桐さんは手を離すことはしなくても、力を緩めた。


「………ほらよ。」


「由茉様、こちらを。」


「あ、ありがとう…」


片桐さんに渡された指輪は、すぐに私の手元に戻り、また指へと通された。


「………よかったぁ…」


ほっとした私は、倒れてる純の横で座り込んでしまい、自然と涙が出てきた。


「何してるんだ!」


そこへ、店員さんと責任者らしき人が来た。


「由茉様、旦那様の名刺を」


「え、あ、はい。」


私は急いでカードケースから慎一さんの名刺を探して、片桐さんに渡した。


「二度とこのようなことがないように、巡回と店員の指導をしっかりやっていただきたい。
もしなにかあれば、会長直々に連絡するように。
湊様がプレゼントされた指輪が奪われそうになったと、こちらも会長へ報告します。」


片桐さんはそういって、責任者らしき人に名刺を渡した。
自分の名刺と一緒に。


そして、その責任者らしき人は名刺を見て、私に頭を下げた。


「しっかりとした対応、お願いします。
由茉様、行きましょう。」


私は純を起こして、片桐さんに守られつつお店を出た。


「この店は、橘グループ系列なんです。」


「え、そうなの?」


いろんなことやってるなぁ…



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