Focus
「聞いて、春華。中庭に先客がいたの」
「え!? めずらしいね。一緒にお昼食べたの?」
「ううん、食べ終わった頃に気づいたから。でもその人にね、初めて会ったのに、『人間嫌いっぽい』って言われちゃって」
「そっかー、いろちゃんも本当はもっといろんな人と仲良くしたいんだもんね?」
うん、と頷く。
「でもさ、その人、さすがに開口一番に『人間嫌いっぽい』って言ってきたわけじゃないでしょ?」
「うん、私から、どんな人だと思ってたの、って聞いた」
「じゃあそこまで話続いたんだね、いろちゃん。いつものいろちゃんなら、そんなに長く話してたかな?」
「確かに……」
「いろちゃん、その人となら、お友だちになれるかもよ? 話し上手なのかもね。実は人間嫌いじゃない、って、ちゃんと言ってみたら?」
「なれるかな……ううん、なりたいな」
「そのいきだ、いろちゃん」
春華に笑いかけられて、私の心はふわっと軽くなった。