Focus
中庭に着くと、奏太くんは地面に寝転がっていた。
「奏太くん?」
よく見ると、木の根もとに生えている花を撮っているらしい。
「彩葉、来てくれたんだ」
こちらを見上げた奏太くんは、少しほっとしたような笑顔を見せた。
「昨日俺変なこと言っちゃったから、避けられてるのかと思った」
「違うの! あの......」
奏太くんのことが見れなくて、うつむく。
「いつも一緒に食べてた子が、久しぶりに委員会がなかったから一緒に食べてて......遅くなってごめんなさい」
「でも来てくれて嬉しい」
「「......」」
沈黙してしまった。
でも、前に沈黙した時は奏太くんが話してくれたから、今日は私が話そう。
何を話せば......あ、そうだ。
「奏太くん、ほんとに女子と話さないの?」
「えー、まだそれを言いますか。ほんとだよ、席近い子は話したりするし、話しかけられたら反応はするけど、それ以外の女子に自分から話しかけないって」
それは、
「少しは私は特別だって意識しちゃってもいい......?」
奏太くんのことを見つめると、
「!?」
なんでそんなに赤い顔してるの!?
「ちょっと彩葉、かわいいこというのやめて......」
「え......!?」
「やだなにこの子、鈍感というか天然というか、素直というか......」
「え、ちょっと待って、奏太くんなに言ってるの?」
「だーーっ! 特別に思ってる!」
「......」
「......彩葉?」
自分で聞いておいてあれだけど......なんか照れてしまう。
「えーっと、ありがと......?」
「え、うん。あ、はい、どういたしまして」
なんか、奏太くんはいきなり挙動不審になってしまった。
そのあと、何回「どうしたの?」と聞いても、その理由は教えてもらえなかった。