大切な物
序章

プロローグ

「おはようございまーす」
蝉が鳴き始めていた7月中旬
大きな声で仕事場に挨拶したのは
会社員の佐藤 修也(21)
(さとう しゅうや)
修也は高校を卒業後ks株式会社に就職
ks株式会社は社員150名ほどの中小企業
修也は平社員で仕事もまぁまぁできて
周りからの信頼もまぁまぁあって
そこらへんの人と変わらない
平凡な人生を送っている
でも、修也はつまらないと
思ったことは一度もなかった

「しゅーやー」
修也を呼んだのは
修也の同期で親友の
山本 信二(21)だった
(やまもと しんじ)

「おはよ!しんじ!どした?」
そう答えた修也に
信二は、深刻な顔で
「おのさー、この前ボーナス入ったじゃん?
だからさ、今までお世話になった親にこれから恩返ししようと思ってなんか買おうって思って
るけどさ何を買ったらいいか分からなくてさ」

『親に恩返し』その言葉に胸が痛む修也
なぜなら、修也には親がいないからだ
小さい頃に親を亡くした修也に
『恩返し』という言葉辛い
でも、その事情を知らない信二には
悪気はない
だから、修也は顔にでないように
信二にこう伝えた
「別に、何でもいいと思うよ
そういう気持ちだけでも
親はうれしいはずだよ
だから、渡すだけじゃなくて
感謝の言葉も含めて渡したら?」

大きく頷く信二
「そうだな!やっぱ修也は頼りになるぜ!
よし、明日買い物いってこよー!修也も
くるか??なにか奢るぜー」
満面な笑みを浮かべながら信二は
修也に尋ねる

しかし、修也は
「わり、明日用事があるんだった!
また、今度奢って☆
まっ、そーゆことだから、ほら仕事にもどれ」
と答えた修也
「えー」
と言いながら自分の席に戻る信二だった

修也、別に明日予定があるわけではない
でも、信二の恩返しって言葉に
久しぶりに母に会いたいと思った修也は
ふと、墓参りにいこうと思ったのだ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

その日も平凡な1日が終わり
次の朝を迎えた

ピピピッピピピッ
時計のアラームがなる
時刻は9時30分
仕事がない日はゆっくり寝るが
1日がもったいないから
この時間で起きる修也
「そろそろ、準備始めるか」
と、修也しかいない部屋に修也の
独り言だけが響く

準備が終わり
愛車を走らせコンビニによって
お供え物を買い、近くの霊園についた
修也は霊園のなかを歩き
ある墓の前で止まった
『佐藤 麻美』
(さとう あさみ)

修也の母の墓だった

「久しぶり、母さん
修也が恩返しとか言うからさ
俺も墓参りしようって思ってきたよ」

修也は少し悲しそうな顔して
そう言ったのだった

修也が母さんを亡くしたのは
小学生の時まで遡る










< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop