恋じゃないと願うだけ






「結香ちゃん…大丈夫」



湧き出るようにそっと差し出された手。


その手がつながる方へと視線を上げる。




「勇樹君…

ありが…と」



勇樹君の手を取りゆっくりと立ち上がると、
流した涙がバレないように…そっと制服の袖で拭いた。




見られていたのだろうか、

勇樹君は小さくなっていく拓君の後ろ姿をじっと見つめていた。





歯をくいしばる勇樹君の表情はなぜだかとても悲しそうだった。






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