恋じゃないと願うだけ
「ちょっと職員室行ってくるね」
「うん、ありがと」
クリーン運動の報告をするため、勇樹君は職員室へ向かった。
あたしはだれもいない教室で勇樹君の帰りを待つ。
懐かしいな…
そういえば、ひとり教室で泣いてたっけ…
夕日に照らされる黒板を眺めながら、あの日の事を思い出していた。
それで、泣き止まないあたしを拓君はずっとずっと
黙って待っててくれたんだよね…
思い出すように、拓君が座っていた席のほうへと視線を移す。
えっ、
そのまま視線を上に移す。
「拓君…?」
廊下から近いその席の前で立ち尽くし、こっちを見ている。
やっぱり無表情で何を考えてるのか分からない拓君。
だけど、少しだけ切なそうに見えるのは気のせいだろうか…