恋じゃないと願うだけ
ゆっくりと離れる体。
拓君に出された手をとり立ち上がる。
徐々に冷静になっていく。
それでもあたしの心臓は騒ぐ事を止めない。
「拓君どうして…」
「エリナから店の場所聞いて…
なんとなく…
気付いたら結…
お前がいた」
一度結香と呼ばれたような気がしたけど、気のせいか。
でも、
なんとなくなんかじゃないって事だけははっきり分かる。
お店までたどり着いた訳ではないし、
中途半端な場所にいるため目印もない。
ここまで来るには迷路のような路地が沢山あったはず。
初めて聞いた息の荒い拓君の声。
きっといっぱい走り回って探してくれたんだろう。
「ありがとう…」
一気に不安から解消された。
微笑んでいるはずなのに、あたしの目からは涙がこぼれている。
そんなあたしの頭を、優しく撫でてくれる拓君。
猫みたいな彼を。
あたしはやっぱり好きなんだ。