1ページ過去編

満点の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜


日が暮れていく。


あっという間に。

金色に輝いていた銀杏たちは、
沈うつに輝きをなくし、力尽きたように舞い落ちていく。


去年。
たった一年前。

ここは。

君がいなくなった時間。
君をなくした場所。
そこで、君の名を叫び続けて。

絶望に満たされて、
彼女と同じ場所から消えてなくなってしまおうと思って来たのに。


見あげる木の向こう。


こぼれそうな、満天の星空。

聞こえた気がした彼女の歌声。

流れる星は涙のようで。

彼女が泣いているようで。

涸れた声でもなお、呼び続けた名前。

かえってくるはずはないけど。

せめて、寂しくないように。

何よりもっと、彼女の歌を、ききたかったから。


響いてくる、君の声。


あふれるあたたかいものは、きらきらと世界をぼかして。

もう、はっきりとわかるのは、幻の音だけで。

二度と会えないはずの、君を見た気がして。

でも、きっともう、
最後、で。

なんて冷たい…そして、このうえもなく、優しくて。

何よりも、
…綺麗な夜。
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