1ページ過去編
煙の街
白い煙がいくすじものぼる。
一面、嫌な臭いが立ちこめ、白くけぶっている。
僕は、そんな中を一人で歩いていた。
美しかった町は、今はただ荒野のようで。
横たわる数多の人々が、不愉快に柔らかい地面と化している。
どこかからうめく声が聞こえた。
走ったわけでもないのに、息が切れて苦しい。
少し迷って、声をあげる。
おーい、誰か生きているのか!
うめき声の聞こえたところを、必死で見てまわる。
小さな子供が、遺体となった女性に抱かれている。
子供は、僕を見た。
この状況にに場違いなほど澄んだ目で。
抱き上げて、走り出す。
はやくこの戦争が終わればいいと願いながら。
戦争に関係のない子供の、未来に光あるように。