1ページ過去編
心の温もり
「ていっ」
そんなかけ声とともにいきなりどんっと押されて、俺はバランスを崩した。
その瞬間。
「もーらいっ!」
買ったばかりの肉まんを…ほかほかの肉まんをっ!
俺の全財産の三分の1を!
「返せ!!」
と言ったころには、パクッと食べられている。
あー…泣きそう。
「俺のなのに……」
「仕方ないなぁ。
一口あげるから泣かないの」
「俺のなのに!?」
一口しか食えないの!?
「何言ってんの!
あんたのものは私のものでしょ」
にやりとわらう幼なじみ。
ジャ○アンかっ!
「でも…私のものは、あんたのもの、かもね」
にやり笑いが照れ笑いに変わって、俺の口には食べかけの肉まんが押し込まれる。
今までは幼なじみで、今日からは恋人。
寒い中であったかいものを食べてるからってだけじゃない。
こいつがいるから。
付き合いはじめの甘さが、
好きな人の存在が、
食べるものの味さえも変えるものなんだな、って。
わかったのは、俺をぶんぶん振り回してくれる、こいつのおかげ。