佐伯くんを好きになった場合。
もう、やめたい。
そう思うけれど、みんな頑張って走っている中1人だけサボるなんてことはできない。
「舞那、ごめんね……」
「大丈夫大丈夫。私、体力あるから!」
舞那は二カッと笑ってそう言った。
美人な上に頭も良くて運動もできる舞那が憎いくらいに羨ましい。
きっと……佐伯くんも、こんな子が好きなんだろうな……。
頭が次第にぼんやりしていく私は、何故かそんなことを思ってしまい無性に泣きたくなってきた。
「(はぁっ……もう、無理)」
その瞬間、私の体は斜めに傾いた。
あ……倒れる。
そう思った時はもう遅くて、「湖々!」「椎名さん!」と頭の上からたくさんの声が聞こえるけれど……。
いつの間にか、私の目の前は真っ暗になっていた。