Sweetie Sweetie Sweetie
翌日の土曜日。
学校は、休みだ。
だが、どうにも気になることがあって、俺は、朝一番で学校へ向かっている。
松田と塚本は、今頃、酔い潰れて寝ているだろうな、とか、まだ帰ってもいないかもしれないな、とか、
それから、
あの彼女は、今頃、何をしているだろう……
とか、
思いながら。
昨日の出来事は、鮮明に覚えている。
特に、あの彼女のことは、忘れようと思っても忘れられる気がしない。
印象的な目つきに驚いて足を止めたが、さらに驚くことに、彼女は……
俺のクラスの、俺の生徒の、
相川三葉、に、
そっくりだったからだ。
「まさか……相川じゃないよな……」
思うほど、そう、どうにも気になって、学校へ向かっている。
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学校に着くと、
俺は、略歴の載った名簿や成績表など、相川に関する情報を集めながら、相川三葉という生徒は、どんな生徒だったかと考えはじめる。
相川は、とてもおとなしい子だ。
だからといって、孤立しているわけではない。
特定の友達はいるようで、仲間内では、“ミィ”と呼ばれているのを聞いたことがある。
成績は、飛び抜けて良いわけではないが、悪くはない。
既に、指定校推薦で受験をして合格通知を貰い、進学先が決まっている。
学校生活や進路の面で、これといった問題はない。
家庭についても、子どもを大学へ進学させる余裕がある時点で、恵まれた環境であると判断できる。
実際に、新学期の保護者面談で話をした母親は、穏やかながらしっかりとした印象を受ける人だったし、父親は企業の役員だと聞いている。
満たされた暮らしをしているはずだ。
そうして、考えれば考えるほど、相川と夜の世界との接点は遠くなっていく。
それならそれで、あれは相川ではないと言い切ってしまえばいいのだろうが、そう言い切れない、心当たりが、ある。
相川は、夏休みが明けた頃から、授業中に居眠りをすることが増えた。
そして、合格が決まった後くらいから、遅刻が増えた。
今は、二学期も後半に近づく、十一月。
近頃では、欠席する日も増えている。
きっと、受験による疲れが出たのだろうと、さして気にも留めていなかったが、
あの彼女が相川かもしれないという疑いを持った途端、
その心当たりが、確信であるかのような気になって、
「……嘘だろ?」
何の問題もないと思っていた、そうして、そのまま、卒業していくものだと思っていた、相川の、思いもよらない闇に、
「どうなってんだ……」
目眩がした。
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