Sweetie Sweetie Sweetie







“だったら、私を買ってよ”







そうして、相川に連れていかれた場所は、





ラブホテル。





年季の入った部屋の、くすんだピンク色は、後ろめたさよりも、哀れさを、掻き立てる。





「何か飲む?」



「ああ、じゃあ、何か……」



「先生、こういうの、慣れてないの?」



「……全然」



「ふーん」





おまえは随分と慣れているんだな、





と、心で呟く。





「そうそう、とりあえず、お金、先払いだから」



「……いくら?」



「二万でいいよ」





そして、空になっていく財布を持つ、俺の手は、





ぎこちない。





「大二枚、ありがとうございまーす」





どうして、俺は、こんな場所で、こんなことを、しているのだろう……





「じゃあ、さっそく、始める?」



「始めるって……何を」



「お金払ったんだから、好きにしていいよ」



「いや、俺、そんなつもりじゃ……」



「でも、私に会いにきたんでしょ?」





そうだ、俺は、確かめたかったのだ。





「それは……」





この街で見かけたこと、



二学期が始まってからの居眠り、遅刻や欠席が気になっていること、



これまでの疑問を、ありのままに、相川に打ち明ける。





「……でも、おまえ、学校では良い子だろ? いきなり、ヤバいことしてんのかとか聞いていいキャラじゃないだろ? それに、俺、担任だけど、おまえと話したこと、ほとんどなかったから、話しかけづらかったっていうか……」



「それで、わざわざ、こんなとこまで!?」



「そう、今のおまえがしてること、確かめるなら、今のおまえに聞くのが確実だと思って」





一通り話したところで、相川は、盛大に笑いだす。





「何それ、そんな理由で買われたの初めてだよ」



「とにかく、学校じゃ話しかけづらかったんだよ。だから、その……したいわけじゃないから」



「わかった、わかったよ。可笑しいなぁ、もう」





けたけた、けたけた、と、



笑い転げる。





「……こういうこと、してたんだな」





もう、はっきりと口にしなくても、答えは、突きつけられている。





「そうだね……っていうか、今さら、違うって言ってもね……確かに、学校で聞かれたらシラきってたかも。先生の選択、正解。先生って、やっぱ、頭良いんだね」



「それは、関係ないだろ」





だが、その答えを突きつけた相川は、





「そうかな。私もさ、学校じゃないから、いろんなこと話せる気がする……先生、プラベだとメガネかけないんだね」



「ああ、変か?」





今、ここにいる相川は、





「変じゃないよ。カッコいいって言ってるの」





俺が知っている相川、ではない。





「あのさ、相川……」



「何?」





それならば、





今、ここにいる相川は、





「おまえ……」





……誰だ?





☆☆☆☆☆
< 5 / 18 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop