Sweetie Sweetie Sweetie
沈んでいく、水の底。
涙を注ぎこむ、水の底。
深い深い、水の底。
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ドアが閉じる音がすると、
朝、だと思う。
閉じた目を開けると、
「ごめん、起こしちゃった?」
彼が、笑う。
「起きる時間だから、ちょうどいい」
「そっか」
「アフター行ってたの?」
「うん、でも、枕はしてないよ」
「本当?」
「本当だよ」
抱きしめられると、
まだ、残る、
お酒と、香水と、煙草と、
夜の匂いがする。
「ただいま」
「おかえり」
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リンと出逢ったのは、
三年に上がる前の、春休み、三月の終わりの頃だった。
何となく、新しい鞄を買おうと、街をふらふらしていた時、声をかけられた。
「ねぇ、ホストクラブとか、興味ない?」
所謂、キャッチ。
「高校生でもいいの?」
「高校生か……残念」
それでも、連絡先を交換したのは、
何となく、甘そうな、ふわふわした雰囲気が、心地よかったから。
「十八歳になって、高校生じゃなくなったら、いつでもおいで。待ってるから」
そう言って、渡された名刺には、
“雪 凛十”
そう書いてあった。
「リン……」
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