ハメごろし
畑の真ん中を横切っていくと、数人の人がこの少年と同じような子を連れている。
桜の木の下に白い粉を撒いているということはあれは誰かの骨だろうか。
畑の中に何かを埋めている人もいた。
私の目の前を歩く少年にはもう何も感じなくなっていた。
歩いている途中で一人の女性と目が合った。目が隠れるくらいの厚めの前髪。真っ直ぐな髪は顎のラインで揃えられている。
口許をにっと真横に引いて楽しむような笑みを私に向けた。舌でいやらしく唇を舐めた。
あの人は慣れている。
直感でそう感じた。
「アユミさん」
女性から目が離せなかった私の気を遮ったのは少年だ。
「どうぞ。えらんでください、ヒトツ、もっていって」
「1つ? 選ぶ?」
「これが高野さんからの最後のことばです」
指した先、小屋の中は獣の臭いがした。