ハメごろし

 あれから2日後、彼の言った通りに彼は死んだ。


 私は彼に言われた通りに実行するのみだった。


 まず、動かなくなった彼をしばらく放置した。彼曰く、すぐには朽ち果てないそうだ。それに、死んですぐのころはまだ体の中の細胞は生きているらしい。


 彼が死ぬまでの2週間、私は彼の側を離れなかった。これは彼の希望希でもあった。


 更に、その2週間は食事を与えなかった。


 これも彼が言ったことだ。


 食事は私だけがする。寝たきりの彼は私に、「おいしいかい? それはどういう味?」と聞いてくる。


 それに答えるだけだ。詳細に味を伝える。


 彼は最初のうちはひどく涎を垂らし、お腹を鳴らしながら喉を鳴らした。


 私は罪悪感に苛まれ、スプーンで一口、食べ物を彼の口の元まで運んだことがあった。しかし彼は、




「君は何も分かっていない。僕のことを何も分かっていない」



 と、顔を赤くして眉間に皺を寄せて私を罵った。



 私はよかれと思ってしたことだ。私だって自分の彼氏が腹を空かせているところに自分一人で食事をするなんてこと、望んでいない。むしろそれは苦痛でしかない。


< 2 / 91 >

この作品をシェア

pagetop