ハメごろし
「車を用意してありますから、どうぞ。そんな土まみれじゃ歩くのもおかしいですよ」
「それでは、これを」
車に乗り込んだ私に手紙を手渡した少年は、「処理の仕方です。分かりますね」と私の目を見て楽しそうに笑った。
「……ええ」
頷くと、少年もまた頷く。
「それじゃ」
車が走り出すと私は隣で力なくシートにもたれている少年の腕をとった。
ひんやりしていて柔らかい。
『彼』は私の中に入ってそこから世界を見ている。
私は一人じゃない。私の中にいる『彼』に食事を与えないと。
さあ、こいつはどうやって作ろうか。
涎を腕で拭い、肩で大きく呼吸をした。
このまま、生きたまま食ったらどんな味がするんだろう。
どうしたら一番旨い状態で食えるんだろう。
手渡された手紙をぎゅうっと握りしめた。
SAKURA.終