ハメごろし

 七つの頃だった。


 その日は学校が午前で終わる日だった。
 どこへも寄らずにまっすぐに帰って玄関を開けようとしたときにその異変に気づいた。
 今まで一度もそんなことはなかったのに、玄関が少しだけ開いていた。


 幼いながらに、『これは何かがおかしい』と嫌な空気を感じて背中がソワっとしたのを覚えている。






『中に入っちゃいけないよ』






「だれ」





 耳の奥に届いた女の声がぬめらかに聞こえて振り返れば、そこには誰もいない。向かいの家の柿の木がさわさわと揺れていた。





 この時間は家には誰もいないはずだ。



 共働きだったために両親の帰りはいつも遅かった。


 この家に帰るのは私が一番始めのはずだ。


 泥棒か?


 それとももしかしたら両親のどちらかが早く帰ってきたのか。




 ドアノブに手を伸ばしながらもさっきの声を思い出して怖くなる。

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