ハメごろし
天井から吊るされている紐の先には頭があって、腕をだらりと落として脱力した人がぶら下がっていた。
男女、二人揃って。
指先は何かを掴むように曲がっていて、足の指は内側にぎゅっと曲がっている。
顔は真っ赤になり、ぱんぱんに腫れていた。
涎が垂れ流されていて、排泄物もたらたらと脚の間から流れて異様なにおいを放っている。
二人は同じように宙を睨み付けたまま。眉間にシワを深く作っていた。目はしっかりと開いていた。
まぎれもない、父と母だった。
肩が大きく上下した。嗚咽が漏れる。声を出したいけれど、喉が絞められているように苦しくて口だけがパクパクと動くだけ。
無意識に後退り、背中でドアを閉めていた。その拍子に玄関のドアも閉められた音がした。鍵もかけられた音がした。
空気が変わった。
陰鬱。
負の空気が部屋中を回っている。どこも開いていないから風なんか入らないはずなのに、吊られている父と母はキー……キー……と音を立ててゆっくりと回り始めた。