ハメごろし
寝たきりの彼の前で自分だけ飯を食う。
そんな行為が私の心をひどく傷つけた。
しかし彼はそんなことはお構いなしに強要する。
彼はそういった状態のまま1週間を過ごした。
1週間も過ぎると朦朧としてくるのだろう。
話さなくなった。
更に彼は朦朧とした中で私じゃなくて幻覚と話し出すようになった。
そうなっても、既に起き上がれなくなっている彼の前で食事をすることは続いている。
「それはどんな味がするの?」
「これは……肉の甘味ととろみが重なって、ふわっと溶けるような、たまごと甘いタレが口の中で絡まってそのまま胃袋に流れ落ちて行くような感じです」
「君は本当に残酷だね……ふふ、それで、そっちはどんな味?」
この頃になると彼のちょっとした視線の傾きで何をしてほしいのか判断するしかなかった。