ハメごろし
「君は残酷だね」
腹を鳴らしながら彼は私のことをうつろな目で見て言った。
「その飲み物はなに?」
飲み物?
これだってアナタが私に指示を出したことだ。
もう、そのことすらも覚えてないんだろうか。
私の答えを聞く前に彼は白目をむき、涎を垂らしながら自分でも知らぬ間に深い眠りの中に落ちて行った。
私は食事をやめて皿を置いた。もどしたい気分になる。
しばらく彼と向き合い、
「あと……どれくらい……これが続くの」
答えてくれない彼の唇を見つめ、小さく息をついた。
私は私のやるべきことをしなければならない。
死ぬ前の彼のことを思い出しながら耽っている場合ではない。
桜のチップ。
それを買いに行かなければならなかった。