ハメごろし
ついにやった。やってやった。
恐怖と安堵に上下する肩を深呼吸で鎮め、まだ震えている両手に力をこめた。
ガラス製の灰皿が赤く染まりながら私の両手の中におさまっている。
足元に転がっているのは私の彼氏。
頭から血を流して力なく横たわっている。半開きになった口からは泡を吹いていた。
本当に死んだのかどうか確かめるために一度肩のあたりを蹴った。反応はない。
虚ろな目は虚をながめるだけで動きもしない。
「これで私は楽になれる。やっと自由になれる」
そう思うしかなかった。
灰皿を床に投げ落とし、その場にしゃがみこんだ。
手についている血を絨毯に擦り付けた。