ハメごろし

「好きだよ。心から」


「私もです」


「君の中で僕は生きられるよ」


「はい」


「一番いい状態で君の中に入りたい」


「……はい」




 彼は時折はっきりした意識になることがあった。


 これも時間の問題だろうと彼は言った。


 大丈夫。それが終われば僕もいい状態状になる。



 意味が分からなかった。


 彼が言った意味が理解できなかった。


「もう……長くない」


「そんなこと言わないで。そうだ。食事をすればきっと、」


「君は本当にひどいことを言う。そんなこと言わないで。僕は君のためにやっているのに」


「……ごめんなさい」


「いいね。準備はできてるね? 僕が言った通りにするんだよ」


「はい」


「それじゃあ、もうここへは来ないでいい」


「え」


「君はあと2日、ここへは来ちゃいけない。2日後に来て、準備をした通りに実行するんだ。いいね」



 それはもう彼とは二度とえないことを意味している。


 そんなこと、私にだって分かる。



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