ハメごろし
もちろん準備はできている。
私の側には人が刺せるくらいの竹串と桜のチップ、ヒッコリーチップが用意してある。
「本当に、心から君のことを愛してる」
「私もです」
「君に言っていないことがある。それが君がこれからすることだよ。いいね。これが最後になる」
「…………」
「それを君はこれからしなければならない。ひとりで。君がそれをしなければ僕は完成しないんだ」
彼の目を追うと、視線は壁を捉えていた。そこには数枚のメモがとめられていた。
「そこに書いてある通りにするんだ。そうすれば君と僕は一緒になれる」
私はそこに目をやり、ゆっくりと側まで行ってメモを剥がし、ポケットにしまった。
体が動かないのに、どうやってそこに貼ったんだろう。
「それでいい。そう、そうするんだ」
「……」
「君は頭がいい。絶対にやりきることができるよ」
笑んだ彼とはうらはらに私は絶対ということばが嫌いだった。
この世の中に絶対なんてない。
だからこそあなたが死ぬんじゃないか。
こんな理不尽な世の中、なくなればいい。
なくならないならば、
なくしてしまえばいいんだ。
そう思った。