サヨナラ、愛してる君へ。
フォンダンショコラを口いっぱいに頬張って
目を輝かせて食べる先輩の姿は食べているものはオシャレでもとても幼く見える。

大人っぽく見えたり、幼く見えたり本当にすごいと思う。






「あ、チョコついちゃった…」







そんなことを思っていれば制服に欠片を落とすなんて
子供のようなことまでするのだから驚きだ。

ちょっと洗ってくるね、そう言ってカバンを持って歩いていった先輩。
仕方ない人だななんて悠長に思っていた俺は
この時すでに勝負が着いていたなんて気がつきもしなかった。







「ねえ、如月くんって本当か読んだりするの?」

「ええ、まあ少しは…」






先輩は帰ってきて、椅子に座った直後そう聞いてきた。

その目は何故か子供が絵本を読み聞かせしてもらう時のような、
ワクワクとした顔で苦笑した。






「え、誰の本!?」

「そう、ですね…
山田悠介さんとかは結構読みます」

「ホントに!?」





先輩の声は静かなジャズが流れる店の中では大きすぎるぐらいで。

ちらほらと視線が集まるのも気にも留めずに、
先輩は自分も好きなんだ、なんて言った。






「私はね…」






そう言って自分の好きな小説について語る先輩。
熱くなって子供みたいだな、なんてすかしていたのも束の間。






「え、俺は…」






何時の間にか真剣に、熱く先輩と語り合っているのだった。
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