サヨナラ、愛してる君へ。
「そろそろ、帰ろっか」






先輩がそう言ったのは、空に星が瞬く頃だった。

いつの間にか時間が過ぎ去り、
カフェには俺たちしかいなくなっていた。






「そうですね」






好きな作家だけではなくアーティストなど
結構趣味がかぶっていることもあって盛り上がり過ぎて、
周りに人がいなくなっていることに気づかなかった。


最初はすかしていたくせに、なんて軽く呆れながらも財布を片手に立ち上がる。
話は盛り上がっていたものの
謎の勝負心は消えず先輩よりも先にレジに立った。






「もうお支払いしてもらっていますよ」






それでも店員さんはそう言ったのだった。

いやいや、いつの間に。
先輩はこぼした時以外席を立っていないはずだ。






「あ…」






あの時カバンを持って行ったのはこういうことだったのか。

後ろを振り返れば、してやったりといった表情の先輩がいた。
この人には敵わないな、なんて苦笑してからこう言った。






「家まで送りますよ」






せめて、これぐらいはさせてもらえなければ
男としてのメンツが立たない。

そう呟いて、そっと先輩の腕を引っ張った。
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