サヨナラ、愛してる君へ。
まあ、有名な人なら他の奴でも知っているだろうし
茶化しにこない奴にあとで聞こうなんて考え直し、
再び篤樹と他愛もない話をしながら歩く。



学校に着き、クラスが別な篤樹と別れる。
その時には先輩のことを忘れていて、
やる気もなく授業を受けていて、気がつけばもう放課後で。

生徒玄関に来てようやく傘と先輩のことを思い出した俺は
頭を抱えながら今から探しても見つかるだろうか、なんて考える。







「あー、やべーな」







いつまでもこの傘をカバンの中に
入れておくわけにもいかないし見つかればいいのだが
なんて思っていれば









「誰か探してるんですか?」







聞き覚えのある透き通った声に振り向けば、
そこには先輩の姿が。


昨日と同じようにいたずらっ子のようなかすかな笑みを浮かべて、
こちらを見上げている姿にホッと息をついて







「これ、ありがとうございました」







なんて言って傘を差し出せば、
先輩は納得したような声をあげてから







「昨日の子か。
風邪ひかなかった?」







そう言ってふわりと微笑んだ。

やっぱりお節介な人だ、なんて思いながら







「ええ、おかげさまで」







そう返せば満足気に頷いた先輩は、
そのまま爆弾発言をした。







「じゃあさ、ちょっとカフェ付き合ってよ」

「は!?」







私が奢るから、なんて言っている先輩に
なんで俺が、と言いたくなるのを堪え自分に昨日のお礼だ
なんて言い聞かせて。







「じゃあ、学校の近くのカフェはどうですか?」







そう提案すれば。
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