めぐり逢えたのに
年が明けて、佐々倉と私は、両家に新年の挨拶をしに行った。

まず、元旦に佐々倉家訪問だ。佐々倉に迎えに来てもらって、二人でご両親の家を訪問した。
途中の車の中で、私は佐々倉に大急ぎでご両親のことをレクチャーしてもらった。とにかく政治の話は厳禁で、当たり障りのない話をしろ、と、念を押された。

「私、別に嫌われても構わないし、破談になったらそれはそれで結構なことなんだけど。」

「頼むから投げやりになんないでくれよ。気に入られるごとに、新居のタワマンの階が一つずつ上がっていくよ。」

「なに、それ。ずいぶん露骨だなあ。」

「そういうことだろ、政略結婚っていうのは。君だって、親父たちが何を求めてるかは分かってるんだから、ちゃんと考えてくれよ。」

私はこの時にはっきり自覚したのだと思う。

私は、佐々倉と結婚をする。
それは、私が佐々倉を愛しているからでも、佐々倉が私を愛しているからでもない。

ただ、お互いの持っているものをお互いが利用したいだけだからだ。だったら、私は最大限にこの結婚を私のために利用する。



武者震いを一つして、私は佐々倉の家を訪問した。



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