めぐり逢えたのに
思いがけない事に、私は、佐々倉のご両親に好感を持った。

私の父が狸親父なら、佐々倉のお父様はキツネ親父というところだろうか。

年の割にはすっきりとした体型からは、かなり健康に気を使っているらしいことが伝わってくる。
話を聞けば、ジムに通ったり、皇居の周りをジョギングしたりしているとのこと。

腹の中で何を考えてるのか計りかねるところは、私の父と同じだった。とは言え、いつか東京マラソンに出場するのが、目標なんだよ、というお父様は可愛げがあった。横で、奥様がちゃかす。

「もう、トシなんですから、あまり無理すると心臓発作おこしますから気をつけて下さいよ。特に、万里花さんみたいな素敵なお嬢さんがいらっしゃるとすぐ張り切っちゃうんだから。」

コロコロと笑う奥様は、おっとりした令嬢そのものであった。私は、うちの母と話が合うのがわかるな、と思いながら相づちをうっていた。



< 110 / 270 >

この作品をシェア

pagetop