めぐり逢えたのに
佐々倉のお母様は、おっとり無邪気に見えたが、良家に育った令嬢特有の冷酷さは持ち合わせていそうだ。

もしかして、すでに「彼女いびり」をされていて、結婚が暗礁に乗り上げ、それで、佐々倉はこんな提案をしてきたのかもしれない、とも思った。私は佐々倉の横顔をみながら、しおりさんと彼が気の毒に思えて来た。

ひょっとすると彼女も「犠牲者」なんじゃないだろうか。


私はご両親に大層気に入られたらしく、実家の近くのタワマンの32階に新居を整えてもらえる事になった、と、後日佐々倉から聞かされた。そこなら、私も土地勘はあるし、便利な場所なので、文句はなかった。



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