めぐり逢えたのに
それに、どうして彼女はこのようなことに納得したのか、とても気になっていた。

私なら、例え、偽装結婚だ、と言われても恋人が他の人と結婚するなんて到底受け入れられない。

彼女はヤケになったのか、それとも佐々倉の財産に目がくらんだのか、あるいは、事情があって結婚はできないが、それでも彼のことを愛して一緒にいたいと思ったのか……。

彼のことを愛しているのなら、一緒になれないのは気の毒なことだと思った。


天井から床までガラス張りになってる窓からは、東京タワーがすぐそこに見え、文句なしに素晴らしかったし、キッチンもフルキッチンで、食洗機とオーブンがビルトインでつけられているから、ちょっとしたパーティーぐらいは開けそうだった。(といっても、パーティーなんか仕出しを頼むに決まっているので、そんな立派なキッチンは恐らくいらないのだが)

バーが付いてないのは残念なのだが、一応パントレーにワインセラーをつけられるし、主寝室にクローゼットと専用のバスルームが付いているのでそこは我慢した。

引っ越し当日、家具を搬入して、大方の片付けを終わらせてしまうと、私は一人カウチに座ってワインの栓を開けた。

広すぎるマンションの静かすぎる部屋に一人、座っていると、つい物思いにふけってしまう。私はやっぱり彼のことを考えていた……。



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