めぐり逢えたのに
あれは何が原因だったか、そうそう、大きなフリマに行った時だった。

にぎやかなフリマは人も多く、はぐれそうだったから、私たちは手をつないで歩いていた。
彼は、本当に、ほんとーに、私の体に触って来なかったので、情けないのだけれど、その時手をつないでくれたことで、もう、私は嬉しくて嬉しくて、それだけでドキドキドキドキしながら歩いていた。

そうしたら、彼の知り合い(と彼は言っていた)にばったりと会ったのだ。

その女の人は私がいるのを知りながら、目の前で彼に親しげに話しかけた。彼女が嬉しそうにはしゃいでいるのが明らかに伝わってきて、私はむっつりと黙ってつっ立っていたが、彼女は、私とつないでいる方の彼の手をとりあげて、引っ張ってどこかに連れて行こうとするから、私もぎょっとして慌ててついて行った。

彼女はポスター屋に行くと、一枚のポスターを指差した。多分、かつて彼らが公演した時のポスターか何かだったのだろう。ポスター女は息をはずませて、目をきらきらさせながら興奮していた。
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