めぐり逢えたのに
「あみちゃん、食べ終わったら、そのネカフェまで送って行くよ。」
「佐々倉さん、私、本当は滝川しおり、って言うんです。」

あ、そうか……、あみちゃんは、源氏名か。
佐々倉は気付いて、目の前にいる、目鼻立ちの整ったこの娘のことを何も知らないことに思い至った。



私は、佐々倉の話を聞きながら、思わず微笑してしまった。

「あなたも、私も、どこの誰とも知らない、怪しい人と恋に落ちてしまうのかしらね?」
「そう、親に大反対されるような素性のわからない、怪しくて心優しい人が僕らは好きなんだ、きっと。」

佐々倉も同意して、

「じゃ、僕たちの恋人にかんぱーい。」

とグラスを高々とあげたから、私はちょっと不機嫌になる。

「あなたは、恋人でしょうけど、私は終わった話よ。」
「じゃ、僕の恋人と、君の元恋人にかんぱーい。」

佐々倉はご機嫌で相当酔っているようだった。
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