めぐり逢えたのに
しおりの話はどこにでも転がっているありふれた話だった。
しおりも、自分の身の上に起きている事が、特別不幸だ、と思っているフシもなく、ただちょっと大変だ、ぐらいにしか考えてないようだった。
「それで、キャバクラで勤め始めた、ってわけ。もう少しお金を貯めたかったんだけど、お母さんが急に具合が悪くなったって言われて、何日間か病院で付き添ってたんだけど……、結局死んじゃった。
あたしの心残りはね、お母さんが、一度でいいから温泉に浸かってゆっくりしたい、って言ってたんだけど、結局一緒に行ってあげられなかったことなんだ………。」
佐々倉は、つい先日別れた彼女と旅行に行った時のことを思い出した。
忙しいさなか、何とか日程をやりくりして沖縄に行ったのだが、ホテルのランクがお気に召さなかったようで、旅行の間中ずっと不満たらたらだった。確かにもっといいところを取ってあげたかったので、佐々倉としても不本意ではあったのだが、それでも決して安くはない宿を取って、全部佐々倉の支払いだったし、あんなに文句言われると、たかられているようでやはり良い気はしない。
「残念だったね……。」
「うん、天国でゆっくり温泉に浸かってくれるといいけどね。」
そんな話しをしているうちにネカフェに着いたものだから、入り口の前でしおりは丁寧にお礼を行った。
しおりも、自分の身の上に起きている事が、特別不幸だ、と思っているフシもなく、ただちょっと大変だ、ぐらいにしか考えてないようだった。
「それで、キャバクラで勤め始めた、ってわけ。もう少しお金を貯めたかったんだけど、お母さんが急に具合が悪くなったって言われて、何日間か病院で付き添ってたんだけど……、結局死んじゃった。
あたしの心残りはね、お母さんが、一度でいいから温泉に浸かってゆっくりしたい、って言ってたんだけど、結局一緒に行ってあげられなかったことなんだ………。」
佐々倉は、つい先日別れた彼女と旅行に行った時のことを思い出した。
忙しいさなか、何とか日程をやりくりして沖縄に行ったのだが、ホテルのランクがお気に召さなかったようで、旅行の間中ずっと不満たらたらだった。確かにもっといいところを取ってあげたかったので、佐々倉としても不本意ではあったのだが、それでも決して安くはない宿を取って、全部佐々倉の支払いだったし、あんなに文句言われると、たかられているようでやはり良い気はしない。
「残念だったね……。」
「うん、天国でゆっくり温泉に浸かってくれるといいけどね。」
そんな話しをしているうちにネカフェに着いたものだから、入り口の前でしおりは丁寧にお礼を行った。