めぐり逢えたのに
タクシーの中で、メーターが跳ね上がるたびに、しおりの心臓もドキン!と跳ね上がった。

「やっぱり、電車の方が良かったんじゃない……?」

しおりは居心地悪そうに、小声で佐々倉に聞いている。佐々倉は、しおりの手を握って「心配しないで」と言った。


佐々倉は、しおりをうちに連れて行った。しおりは、まず、玄関のオートロックに驚き、広々としたロビーに言葉を失くした。

「ホテルに住んでるの?」

目を丸くさせてはしゃぐしおりが愛くるしい。部屋の中に入ってもしおりの驚きは止まらなかった。

「綺麗〜〜、ドラマみたいな部屋〜。ホントにこんな部屋があるんだ〜。」

こんなに綺麗でピカピカしたところは初めてなんだそうである。床がまっすぐだ、と言って驚いていた。洗面所とトイレが別々になってる、って感動していた。(お風呂があることにも感激していた)キッチンの冷蔵庫の高さに、圧倒されていた。

まるでディズニーランドではしゃぎ声をあげる女子高生のようなしおりを見ているうちに、佐々倉はまたも、言いようのない罪悪感に襲われた。
< 135 / 270 >

この作品をシェア

pagetop