めぐり逢えたのに
「荷物を置いたら、食事に出ない?」

結構いい時間になっていたのに、何も食べていなかったから、二人ともお腹がぺこぺこだった。

しおりはこくんと頷いた。

佐々倉は、しおりにうんと美味しいものを御馳走したかった。
おそらくこれまで贅沢とは無縁で暮らしてきたしおりに、少しは楽しい事を味わってもらいたかった。

席について、しおりはメニューを開きながら、目を白黒させる。
一生懸命メニューを読んでも、どんなお料理が出て来るのか皆目見当がつかない。

これ、日本語で書いてあるんだよね、と佐々倉に確認すると、佐々倉は優しく微笑んだ。

「おまかせで頼んじゃっていいかな?」
「ハイ、お願いします……。」

佐々倉は、ワインと料理を注文した。きらめく夜景をみながら、ワインで乾杯していると、しおりには、現実の出来事とは思えなかった。

見た事もない料理に舌鼓をうって、ほろ酔い気分で手をつなぎながら、二人は佐々倉のマンションに戻った。
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