めぐり逢えたのに
そんな風にまずまず順調な新生活を送っていたある日、佐々倉から、一緒にパーティーに出て欲しい、と連絡がきた。

佐々倉からの連絡は、結婚して初めてのお正月に互いの家に挨拶に行って以来、4ヶ月以上が経っていたから、私は、ああ、そういえば私は結婚していたのだった、とその時思い出したぐらいだった。

最初の半年こそ、２週間に一回ぐらいは連絡を取り合って、簡単な近況報告をしていたものの、半年を過ぎる頃からお互いそれも面倒になり、何か必要なことがある時だけ連絡する方式にいつの間にか変わっていた。

連絡ったって、ケータイでメッセージを送り合うだけであるし、隣りに住んでいるというのに、私たちは全く顔を合わせることもなかった。


週に二回は佐藤ばあが佐々倉と私の家を手入れしてくれていたし、彼女が必要だと判断した情報は（どっちかが言い忘れていたとしても）お互いにちゃんと流してくれるので、それほど困った事がおきた事は今までになかった。

全く佐藤ばあは私の優秀な秘密兵器だった。
私は、佐藤ばあにはいろんなことが相談できたし、佐藤ばあはなかなかの知恵者で、こんな不自然な生活を裏から支えてくれていた。
< 142 / 270 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop