めぐり逢えたのに
近年まれに見る豪華な結婚式だったとか、戸川の父はどうしてるとか、そんなどうでもいい世間話をしていたら、すーっと彼が私たちの方にやってきた。

亀山勇三は、彼を呼び寄せながら私たちにそれはそれは満足げな笑みを向けた。

「君たちも知ってるよな、小野寺拓也くん。ちょっと縁があって今日のお祝いに来てもらったのだよ。」

佐々倉は、小野寺に手を差し出して握手を求めた。

「初めまして。佐々倉直樹です。こちらは妻の万里花です。」

彼も静かに微笑みながら、佐々倉の握手を受けた。

五年ぶりの彼の笑顔。私は自分がどんな顔をしているのかわからなかった。
私は笑っているだろうか、泣いているだろうか、それとも困っているだろうか?

「小野寺拓也です。こちらこそよろしくお願いします。」

それから、私を見てにっこり笑った。

「万里花さんもよろしくお願いします。」

にこやかで丁寧な挨拶だったけれど、その笑顔から彼の心中を読み取ることは出来なかった。
私はごくりとつばを飲み込んで、ようやく彼に言葉を向ける事ができた。

「テレビでのご活躍、いつも拝見させて頂いています。」



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