めぐり逢えたのに
「大丈夫か。顔から血の気が引いてるぞ。」

「うん、ちょっと一緒にいてくれる、悪いんだけど。」

「あそこのテーブルで座って食べよう。」

私たちは適当に食べ物を取り分けて、テーブルに着いた。私はローストビーフを切り分けて無言で口に放り込んでいた。それから水を一口二口飲む。それでも全く気分は落ち着いてこなかった。

佐々倉が持って来てくれたデザートのミニケーキをいくつかつまんで、コーヒーを飲むと、ようやく安堵感が訪れた。
こういう時はスイーツが一番だ。

私の顔色が戻って来たのを確認して、佐々倉は私にチケットを手渡して小声でささやいた。

「これ、表で出せば、オレの車を回してくれるはずだから。」

なぜ、私が佐々倉の車を?

「連れて帰れ。最初で最後のチャンスだぞ。」

私が呆然としてると、佐々倉は

「早く探しに行けよ。あいつ、帰っちゃうよ。」

と、急かした。


私は弾かれたように立ち上がって、走りだした。



< 149 / 270 >

この作品をシェア

pagetop