めぐり逢えたのに
私が思い出し笑いをしたものだから、彼も笑顔になって、

「どうしたの?何か楽しいことがあった?」

と聞いてきた。ああ、私は、彼とのこういう会話が好きだったんだ、って今さらのように思い出した。
私が笑うと彼はいつも笑顔になる。

「うん、最初にね、あなたのアパートに行った時のこと思い出してた。怖いほど無愛想だったなーってね。」

「そう、だってあの時は君を追い出さなきゃって思ってたから。」

「なのに鍵?」

私がからかうと少しはにかんだように笑った。こういう表情も昔と変わらない。

「でもまた来て欲しくてたまらなかった。もうね、ホント、子どもみたいだったね、オレも。今だから言うけどね、あのパーティーでさ、会場に入れなかったことを根に持ってたから、噂のマリカ様をちょっといじめてやろうか、って思ってたんだよね、最初は。」

「そうだったんだ?!」

「そう、でも、君といるうちに……。」

「いるうちに?」

彼は、ふっと無言になって、しばらくしてからゆっくりと吐息をもらした。

「………会いたかった。」




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