めぐり逢えたのに
私はドキドキする心臓の音が彼に聞こえるのではないかとヒヤヒヤする。
もう胸の高鳴りが止まらず、発作を起こすのではないかと思ったぐらいだった。

そうこうしていうるうちに、車が家に着き、マンションの地下の駐車場に車を停めて、そのまま私の部屋に彼を連れて行った。

中に入って鍵をかけた時、私は初めて彼の顔をじっと見つめることができた。そのまま彼の首に手を回した。

彼も私を抱きしめて、顔中にキスを浴びせた。

あれ以来、ずっと止まっていた二人の時間が急に流れ出したかのように感じられた。五年も会っていなかったとは思えない程、私たちのふるまいは自然だった。

私は、笑いながら、「こっちに来て」と、彼をベッドに案内した。

彼は、私をお姫様だっこして、「こっち?」と聞きながら、廊下のドアを指すから、私はクスクス笑って、

「そっちに行くと佐々倉の家にいっちゃうよ。しおりさんと鉢合わせしちゃうから行かないで。」

と、注意した。

「佐々倉の家? しおりさん?」

私は抱っこされながら、やっぱり首に手を回して、彼の唇をちゅっと吸った。
少しくすぐったくてとても楽しいキスで、私たちは陽気にクスクス声をあげながらベッドまで行った。

「私たち、隣同士別々の家、っていうか住まいに住んでるの。で、このドアの向こうが佐々倉の家。彼は、あっちで恋人のしおりさんと暮らしてるの。」

私が説明すると、彼は不思議な顔をして、

「金持ちってすることが普通じゃないなー」

と妙な感心をした。




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