めぐり逢えたのに
私と彼はケータイの番号を交換した。それから、マンションの鍵も渡した。

一応、佐々倉のことも、勝手に入って来る事はないはずだけど、万一来た時は、緊急事態のはずだから、私がいなければ二人でうまいことやるように、と指示を出して、もしも、父と鉢合わせになりそうだったら、佐々倉のところに緊急避難するように、と念を押した。

父と母にこのことがばれたら、何をされるかわからないので、絶対ばれないようにしたかった。

彼と引き裂かれるのはなんとしても避けたかった。私はこの悦びをもう二度と誰にも邪魔されたくなかったのだ。

彼が出て行った後も、私は部屋でしばらくぼーっとしていた。

今日は土曜日だから、ゆっくりできる。テレビから、爽やかな彼の笑顔がまた流れて来て私はニヤニヤが止まらない。

髪の毛をかきあげてもらえるのは私だけですからね。

スカイツリーのてっぺんから世界に向かって叫びたかった。


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